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1999年度 活 動 報 告(敬称略)
99/07/09
日時:7月9日(金) pm3:00〜5:00
題目:近代日本における文化ナショナリズムと「地方」 ―戦前期における「民謡」の社会的付置を手がかりとして― 報告者:武田 俊輔氏(東大大学院修士課程在籍:社会学) コメンテーター:宮本 直美氏(東大大学院博士課程在籍:社会学) 〜修士論文検討会と併催〜 連絡人より 武田氏の報告は、大正中期から昭和初期にかけて生産された「民謡」「新民 謡」という大衆歌謡ジャンルを素材としながら、ナショナル・アイデンティティ の生成を、ネーション内部の地域的アイデンティティとの関連で論じる興味深い ものでした。 コメンテーターの宮本氏からは、「文化」「民謡」などの概念の含意から、修 士論文全体の構成に至るまで、懇切なコメントとアドバイスが提出され、参加者 は5人と少なめでしたが、密度の濃い議論が展開されました。 99/08/28
☆韓国の民主化と所得分配政策
野上裕生氏(アジア経済研究所) この報告は韓国の民主化と所得分配政策の変化を考察し、開発と民主化という 点から所得分配政策を考えることを試みる。そして、経済発展と民主化の過程で 社会的公正と所得分配問題はどのような役割を果たしたかを考えてみたい。1960 年代以降の韓国の所得分配政策は開発指向的政策体系の一つとして産業政策を補 完するもの、その影響を事後的に緩和するものという政策が強かった言えるだろ う。このような政策は過去の厳しい経済調整を行なう上でも、その社会的コスト を緩和する点で、一定の役割をしてきた。しかし、1980年代以降の経済成長とと もに国民の要求が多様化し、所得再分配の課題も変化してきている。一方このよ うな要求に対応できないことが韓国の民主化の加速にも作用した。また実際の所 得分配の不平等と人々が社会の中で実際に認識する不平等とのギャップは経済発 展に伴い大きくなり、民主化を通じた再分配の要求を高めるであろう。そこでこ の報告では、まず第一に所得分配の不平等が韓国の民主化に及ぼした影響を考え たい。 第二に、民主化の過程で所得分配政策が二種類の失敗をいかにして解決したか を考察したい。第一は本来政策的支援の対象にすべき階層を対象にできなかった 失敗、第二は本来再分配政策の対象にすべきでなかった階層を対象にした失敗で ある。1980年代以降の韓国でも社会政策の進展が見られたが、所得格差の是正と いう点でのこれらの政策の実績を評価してみたい。 99/08/28
アルチュセールとスピノザ:重層的決定の係争過程をめぐって
今野晃氏(東京大学大学院) アルチュセールの「重層的決定」という概念は、これまで、一般的には社会を 経済的な審級に還元せずに「多元的に」とらえる分析枠組みとして理解されてき た。しかし、アルチュセールの議論を厳密に追えば、彼の提起した「重層的決 定」は「多元論」でさえないことが明確になる。つまり、社会的な現実とは認識 において数えることのできる二つや三つの説明変数に還元することはできないこ とを、「重層的決定」は含意している(そうした意味において「多元論」ではな い)。 こうした点を理論的に深化させる上で重要なのが、スピノザの係争過程(仏 proces)に関する議論である。実在を認識に還元しないスピノザの認識論的態度 をアルチュセールとの理論的関係においてとらえることで、アルチュセールの 「重層的決定」は新しい社会科学方法論を提起する。
社会ゲーム論:フレームワーク
桜井芳生氏(鹿児島大学) http://member.nifty.ne.jp/ysakurai/ 社会学(者)の視点から、昨今の非協力ゲーム論・進化ゲーム論の発展を高く 評価し、感謝しつつも、それに不満を感じ、その不満の克服をめざすフレーム ワークを構想した。社会ゲーム論と暫定的に呼んでみる。ゲーム論に対する大き な不満の第一は、選好関数の所与性である。第二の不満は、意味的事態の軽視で ある。われわれは、この不満の克服をめざす過程において、通常のゲーム論と は、異なるフレームワークを採用することになった。これは、既存の人気のある 社会学諸理論に対しても、あまり類似的でない。われわれのフレームワークはお もに以下のような主要仮説の基づく。「長期選好関数の存在」「社会状態の、非 協力ゲーム(ないし、進化ゲーム)的メカニズム(ナッシュ均衡)(ないしES S)による、『かなりの程度』の決定」「しかし、人間は、選好関数によるゲー ム論的メカニズムでまったく安心してしまうほど「ふっきれた」マシンではな い」「すなわち、人間のゲーム・マシンとしての非安心性」「その非安心性によ る、いくつかの問題の生起」「問題1,選好の自己不明証性」「問題2,均衡の非 一意性」「問題3,教育における一見自明な規律、の発生」「問題をごまかすた めの、「自他弁証」としての「意味」の生起」「意味の相互承認としての「物 語」の生起」「ゲーム論と社会ゲーム論との検証可能な差異」「短期選好関数の シフトによる、ゲーム論的「均衡」値の移行」「新均衡値へのたおやかな移行 が、物語・意味によって、障害せられる場合の存在」「その場合における、新 「意味」「物語」の構築作業としての文化革命」「「世代」間「意味・物語」 ギャップの生起場合の存在」「世代間文化闘争の、「非論理的」「時間的」決 着」。 おもに以上である。(著作権保持) 99/08/29
☆第三世界化する日本
金原克範氏 今回は、近年の我が国の教育現場にみられる英語コミュニケーション(のみ の)重視傾向に関して批判的報告を行う。 1996年7月19日に提出された第15期中央教育審議会答申では「国際化と教育」 に関して提言が行われ、学生の留学・教員の海外研修・外国語指導助手の招致・ 留学生の活用等が具体策として提案されるなど、近年の我が国では、教育現場へ の英語コミュニケーションの導入が盛んに取りあげられている。 しかし、1978年にドーアが『学歴社会・新しい文明病』で取り上げているとこ ろでは、スリランカ・ケニア等では旧宗主国の言語が学校指導において多用され ていたにも関わらず、教育的効果をあげることはできなかった。ドーアはこの分 析において、仮説として後発諸国が先進国の情報を単純に模倣することを採点の 基準とする“学歴中心主義”に陥っていることを、教育効果減衰の最大の原因と してあげている(後発効果)。 日本が世界に向けて提唱したライフサイエンス部門の共同研究推進プロジェク ト=ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムでは、事業開始年度の 1990年度では日本人プロジェクトリーダーは3割存在していたのに対し、本年度 1999年度では0(ゼロ)割にまで減少するなど、近年の我が国の科学研究の生産 性は有意に低下している。 各国ごとに、プロジェクト・リーダー産出と海外留学生の産出とを比較してみ ると、両者には負の相関が存在している。留学生を多く派遣する国では、プロ ジェクト・リーダーの産出はごくわずかであり、リーダーを多く輩出する国で は、海外への留学生派遣はわずかである。 以上の現象はドーアの仮説を裏付けるものであり、近年の我が国にみられる英 語重視傾向と、相反する科学研究の生産性の低下は、我が国において後発効果が 見られることを示しており、報告者は両者の相関から、我が国の教育環境が近年 急速に第三世界的教育環境に近づいていることを結論する。
靖国神社問題の最終的な解決
橋爪大三郎氏(東京工業大学) 靖国神社が国家によって維持されえたのは、神道が宗教でないとする明治国家 の政策によった。明治国家は、維新の殉難者を祀る「霊」の考え方を創始し、招 魂社→靖国神社を創設した。 戦争が度重なるごとに、戦死者の霊はふえ、第二次大戦ののち213万柱が新 たにつけ加わる。 占領軍の政策により、靖国神社は宗教法人となったが、そこに祀られている 「霊」は、公共的な性格をもったままである。戦後憲法と靖国神社との矛盾の解 決が残された宿題となっている。 そこで、この問題の最終的な解決のため、1)靖国記念公園案、2)靖国神社 借景案、3)新公園案など4つのプランを立て、その得失を考察した。靖国記念 公園案がベストであるが、実現性は楽観できないという結論をえた。 99/09/27
<敗北をみすえて――あるいはアルチュセール・ルネッサンスのために(今野 晃)
アイデンティティの記述を考える(赤堀三郎)
99/09/30
日本企業におけるセクシャル・ハラスメント問題――女性のセクシャル・ハラスメント対応を中心に(Jessica Lam)
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